ヘラクレスを増やしてみよう


ヘラクレスに産卵させるのは、実はそんなに難しいことではない。うまくいけば、100卵ぐらいとれるぞ。
タイミングと温度がある程度あっていれば大丈夫。

まずはヘラクレスに交尾をさせよう

といってもいつでもいいという訳ではない。だいたい後食がはじまって2週間ぐらいは、たっぷり高タンパクゼリーを食べさせよう。

たっぷりエサを食べさせたら、メスの上にオスをそっとのせてみよう。やる気があればすぐに交尾をはじめるぞ。うまくいかない場合は、もう2・3日エサを食べさせて再トライしよう。



交尾は、1時間程度で終わるがそのまま1週間ぐらい同居さそう。1回の交尾では十分な精子がメスに送り込まれていないため、産卵数が少なくなってしまう。同居させることで数回交尾させて産卵数アップを図るぞ。ただしそれ以上長く同居させると、今度はオスがメスを追いかけまわして、メスの体力を奪ったりストレスを感じて産卵数が減ったりする可能性が高くなってしまう。
元々ヘラクレスは、メス殺しをするようなことはめったにないから1週間ぐらいの同居なら問題ないよ。
でもそんなに沢山幼虫ととらなくていいとか、少しでも長生きさせたいと思ったら交尾は1回にしておいて、あとは別居させたほうがいいよ。

産卵温度は23度から25度ぐらい。これより多少高くても低くても産むときは産むけどね。


産卵セットを組もう

ケースの大きさは最低でも特大サイズはほしい。出来れば底が深い衣装ケースなんかがいい。


ホームセンターなんかで売ってるこんなやつ


マットは、発酵マット。原料はしいたけのホダ木を粉砕したものや、しいたけやその他のきのこの廃菌床。それを小麦粉やふすまなどを加えて発酵させたものが一般的にカブト用発酵マットとして売られている。
各メーカーや各ブリーダーが膨大な種類のマットを販売している。賛否両論あると思うけど、私は値段の高い安いが必ずしも産卵数や幼虫成長に関係するとは思わない。要は、マットの取扱方が大きく影響してくると思う。

マット購入時には、そのマットの取扱方をよく販売者に確認をすること。特に使用前にマットのガス抜きが必要かどうか確認しよう。

ガス抜きって何?
マットは、ほとんどが袋に密閉されている。密閉されているとマットは嫌気性発酵という状態になってとても臭い。このまま使うと虫達は酸欠をおこしてしまうので、マットをひろげかき混ぜて酸素を送り込みマットを好気性にかえてやる。こうすることをガス抜きというよ。3日ぐらい攪拌しながらひろげればだいたいは大丈夫。ガス抜きができたマットは臭くないよ。

ただマットによって違うので必ず購入者に確認してね。


セメントなんかを練る舟にマットをひろげてガス抜きをする




マットをケースに詰めよう

まずマットの水分量は、片手でギュッと握って固まるくらい。それをケースの底から5センチぐらいガチガチに詰める。ケースがこわれない程度に足で踏みしめる。特に端っこの方は手で押し込むようにする。さらにもう5センチぐらいさっきほどではないがガチッ詰める。そして最後ケースの縁から10センチぐらいの所まで手で軽く押さえるぐらいで詰める。

あとは転倒防止の樹皮や止まり木を入れて、ゼリーを入れて完成。


ギュッと握って固まるぐらいの水分量
    









体重をかけて足でフミフミ、端の方は手で押し込んで固く固く




完成



注意事項として、マットの水分量が少ないと感じたら、マットに加水することになる。マットに加水すると、なんと再発酵をおこしてマットが熱をもってとても熱くなってしまうことがたまにあるぞ。これを防ぐために、マットに加水をしたら2・3日そのままにして発熱しないか確かめてから、ケースに詰めるようにしよう。ケースにつめてからも初めのうちは、ケースの底に手をあてて発熱していないか確かめよう。1週間ぐらいして発熱していなければほぼ大丈夫だよ。

セットにメスを投入

投入すると産む気満々のメスはすぐにマットにもぐっていくぞ。もぐらなくてもしばらくそっとしておこう。
マットにもぐったメスはしばらくはマットの中でひたすら産卵している。といっても1日に1個から3個ぐらいが普通かな。一応いつ浮上してきてもいいように(長くても1週間から10日に1回は浮上してくる)エサは新鮮なものを置いておこう。
その状態でだいたい2週間から20日ぐらいそっとしておく。そしてメスが浮上してきたタイミングをみて、次のセットにメスを移して新たに産卵をさせるぞ。これをメスが死んでしまうまで繰り返す。
1回のセットで20卵ぐらい採れたらオッケーぐらいの気持ちでセットしよう。100卵採るとして1セット2週間20卵とすると、5セット10週間もメスは卵を産み続けることになるぞ。すごい体力だね。死んでしまったらお疲れ様と言ってあげよう。


次は割り出し

割り出しっていうのは、産卵セットをひっくり返して卵や幼虫を回収することだよ。
この割り出し、卵で回収するのがいいのか?幼虫で回収するのがいいのか?なれないうちは幼虫での回収がいいと思うよ。私も基本は幼虫回収。楽だから。卵はどうしてもつぶす危険があるから慎重になってしまって時間がかかる。幼虫だと結構ポロポロ出てくるから回収しやすく見逃しも少ないし、なにより早い。

ただ幼虫回収にもリスクはあるぞ。卵がダニやカビにやられたり、マットに菌糸がはびこって卵が菌糸にまかれて死んでしまったり。
なれてくるとセットによって、卵がいいか幼虫がいいか判断できるけど難しいから、ここでは幼虫回収ですすめるよ。

卵の期間は約1ヶ月から1ヵ月半と言うことは幼虫回収しようと思えば、メスをセットから出してから最低でも1ヶ月半ぐらい経ってから割り出しを行うことになるよ。


では割り出し開始

まず、ケースごとそっとひっくり返す。
どこに?
本当は、ガス抜きで使ったセメントを練る舟ってやつがあれば一番いいんだけど、なければレジャーシートなんかをひろげてその上にひっくり返そう。
そっとケースをどければ、底面や側面に幼虫が何匹かはみえているはず。その子達をまず回収。
回収した子はどこに入れようか?
このとき約に立つのがプリンカップやブローケース、コンテナボックスなどだよ。もちろん成虫を飼っていたケースでも大丈夫。
プリンカッップやブローケースなどは、1匹づつ、コンテナボックスや成虫のケースなどは複数匹いれていくよ。マットは産卵セットのマットを入れよう。足らないときは、産卵セットのマットと新しいマットを混ぜて入れてあげよう。

たまにまだ卵の子もいるときがある。卵は清潔なスプーンなどですくって丁寧に扱おう。卵はプリンカップなどにマットをいれて、指で穴をあけてそこへ静かに入れてあげよう。上からマットをかける必要はないよ。


ブローケース
左が1500cc(径137mm×高さ130mm)
右が1800cc(径137mm×高さ155mm)
これに1匹づつ幼虫を入れておくと、3令幼虫になるまでそのまま入れておける。

 ブローケースやプリンカップには、必ず穴をあけるようにしよう


プリンカップに卵を入れた状態





幼虫飼育

幼虫期間は約1年から1年半大きなオスだと2年かかるものもいるから、気長にがんばって飼育しよう。あきて忘れ去らないように。

初令〜3令初期まで

2令後期から3令初期までは、上のブローケースに1匹か2匹づつ。またはコンテナボックスなどに複数飼いでオッケー。


カブト虫ブリーダーにはおなじみ、
ハニーウェア製QBOX
QBOX30(340×220×140)内寸(285×190×120)
QBOX40(385×265×150)内寸(330×230×130)
QBOX50(495×345×195)内寸(415×300×180)

他にミニと20、それから衣装ケースぐらいの60がある
QBOXには空気が通る隙間があるから穴をあける必要はないよ。

QBOX40サイズなら5・6匹ぐらいまでを目安にしよう。
プリンカップの卵は、全部孵化したらブローケースかコンテナボックスに移すけど、孵化したばかりの幼虫は弱いから、少し時間をおいてから移すようにしよう。
幼虫が大きくなるまでプリンカップに入れてると、プリンカップをかじって穴をあけてしまうから気をつけよう。


卵から孵化してまもない初令幼虫



2令中期幼虫



ブローケースの側面に2令幼虫がみえている



3令初期以降

幼虫が大きくなってくるとケースの側面に幼虫が見えてくるようになる。
だいたい2令後期から3令初期になると基本的には単独飼育に入っていくよ。
オスで最低でもQBOX40はいる。オスの蛹室は20センチ以上になる。だから最低でもこの大きさがいるわけ。
メスは20サイズからオッケー。40サイズなら2頭入れても大丈夫。
産卵セットに使った衣装ケースに5・6匹一緒に飼ってもいい。
ヘラクレスの幼虫は、共食いすることはないから複数飼育でも全然問題ないよ。




左が3令初期、右が2令後期
これぐらいになると単独飼育にかえていく
下のコインは500円玉ね。


もちろんQBOXでなくても、同じようなコンテナボックスで十分代用できる。
成虫を飼っていた飼育ケースでも大丈夫。その場合は蓋とケースの間に新聞紙などをはさんで、マットが乾燥しないようにしよう。

オスで大ケース以上、メスなら中ケースでオッケー。

マットは産卵に使ったものと同じでいい。ただし産卵セットのようにギュウギュウに詰める必要はないよ。
手で押さえる程度でいい。

マット交換

マットの表面に糞が目立ちはじめたり、マットの量が目に見えて減ってきたら、マット交換の時期だよ。
ケースの大きさやオスメスでも違うけど、だいたい早いもので3ヶ月、遅いもので半年ぐらいかな。

マット交換の間隔は、あけすぎないように。大きな容器で飼育しているからといって、マット交換の間隔をあけすぎると、マットが劣化して幼虫の成長に障害がでるよ。

マット交換は、全部交換してもかぶと虫の場合は問題はないけど、少しだけ糞や古いマットを一緒に入れてやると、糞などに含まれるバクテリアが新しいマットを早く幼虫がなじめる環境にもっていってくれる。だから幼虫もストレスなくスクスク育つよ。


左はマットがかなり減った状態
右はマットに糞が目立ってきた状態
これでも交換時期は少し遅いくらいだよ


このケースは両方QBOX40で約5ヶ月ちょっと経過
3令初期にメス幼虫を単独で入れていた状態

こうやってマットをガンガン食べさせて、ガンガン大きくするぞ。
大きな成虫になるには、幼虫のときにいかに大きくするかにかかってるからね


左が3令中期。この時期にガンガンマットを食べさせて大きくする。


3令も後期になってくると幼虫の体が黄色くなり、体重増加はほとんどしなくなってくる。
ここから蛹になるまで、いかに体重を落とさずに維持するかが大きな成虫にするコツだよ。


黄色くなった3令後期幼虫。この時点で100グラムをかるく超えてくる。
右の白い状態とは一目瞭然
右の個体は3令中期約50グラム。まだまだ大きくなる。
左の個体で約120グラム。体重増加が止まり、蛹まで体重減少を最小限に抑える。
コインは500円玉



前蛹から蛹

蛹になる準備をはじめているのが前蛹状態
蛹室(マットや糞を固めて繭状になっている)を作ってその中でじっとしているよ。
蛹室は横長で片方が高くなっている。当然高い方が頭。

あれ?横長?と思う人がいるかもしれない。
そう日本のかぶと虫は縦長。でも世界的には横長が主流。縦長が変わり者なのだ。


蛹室はケースの底の方に作ることが多い。
左の写真のように上の穴は開いてないよ。
確認のためにあけただけね。



人工蛹室でじっとしている、蛹になる直前の前蛹。

前蛹で約1ヵ月。





いよいよ蛹化
角はたたまれているよ。幼虫の皮をだいたい脱ぎ終わったら、今度は体をくねらしながら角に体液を送り込んで伸ばしていくよ。
まず胸角が伸び始め、伸びきったら、次に頭角。
この時に角が蛹室の壁につっかえたりすると角が曲がってしまうよ。
成虫の角の形は、この時に決まってしまう。


無事に蛹に変身。


蛹期間は1ヶ月半から2ヶ月ぐらい。
大きいオスほど長くなる。メスなら1ヶ月ちょっとで成虫になるよ。


前蛹や蛹はとてもデリケート。とにかくさわらないこと。
さわると蛹化不全や羽化不全のもと。気をつけよう。


いよいよ羽化

羽化が近づくと角や手足の部分が黒くなってくる。
いよいよ待ちに待った成虫の誕生だ。


角や手足が黒くなってきた羽化間近の蛹

羽化はまず手足を動かし、蛹室の壁を利用して起き上がる。そして皮を脱ぎ捨てる。このときスムーズに起き上がれなかったりすると羽がグチャッとなってしまうよ。


無事羽化成功。羽化したては羽が真っ白だよ。


羽の色が少しついてきたよ。

あとは羽や体が固まるのを待つだけ。
羽化したては、まだ体が固まりきっていないのですごく弱い。
まださわるのは我慢だよ。
羽化して1ヶ月ぐらいすれば少しぐらいさわっても大丈夫。でもくれぐれも触り過ぎないように。
本当は、このまま3ヶ月ぐらい蛹室の中でじっとしているからね。


かっこいい成虫になったよ。めでたしめでたし。


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